ふと、クリスマスに読むライトノベルとか何が良いかしらん?と考えようとしてみたのですが、例えばパッと思いつく『クリスマス上等。』なども、「クリスマスが題材」でピッタリなのは良いとして当日に読んで心がウォーミングするかどうかは微妙なところです。かと言ってハーレムものもなぁ…さじ加減が難しい。前提条件に突っ込みはなしで、当日は本棚を片付ける日にしよう。素晴らしく生産的だ!などと戯言めいているうちにピッタリな一冊を思いつきました。

クリスマスの晩餐代わりにどうですか?

儚い羊たちの祝宴

儚い羊たちの祝宴

若く美しくも賢き女当主と侍女の、愛と信頼の物語がレトロな空気を醸し出すかと思えば、プロフェッショナルとしての家政婦という仕事がみせる機能美…素晴らしい女性達の織り成す連作小説だなぁと感心しました。単純にメイドさんスキーとして読んでも面白いし、ほの百合好きな人にも当然オススメですよ。例えるなら、ちょっと豪華なクリスマスディナーを楽しんだような…そうですね、どちらかといえばフレンチ。鹿、兎、子羊など普段は口にしないような食材がピッタリくるイメージ。いっそ、ジビエでも良いですね。
それでいて、到る所に散りばめられる古典小説のアクセントが、好きな人には堪らないんじゃないかな、と思います。自分はあまり本を読んでいない人なので恐らく一割も楽しめていないのでしょうが、わかる人にはわかるんだろうなーと想像すると少し悔しいくらい。連作ひとつひとうの解釈も違ってくるんでしょうね。本好きのための本でもあるのではないでしょうか。
ところで、作者は米澤穂信でしたね。それだけでもう、ワクワクしてしまうのが『ボトルネック』『インシテミル』の流れからすれば当然…かも知れません。一番好きなのは最初のお話。納得したのは最後のお話。ニヤニヤが止まらない暗黒ミステリとは!やっぱり大好き、この作者!と思いつつ。