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インストール (河出文庫)

インストール (河出文庫)

女子高生・17才・ひきこもり・押し入れ・小学生・PC…それら全ての上澄みをきれいにすくいとってみせた小説だと思う。
不登校児になっていた事が親にばれても、小学生の押し入れに入り浸っている事がばれても、何も波風は立たないし、かずよしは最後まで聡くふるまってみせるし。それぞれが交錯しては、学校生活に戻ったりささいな「癖」を矯正して日々をまた過ごしてよいというシメが、また見事なくらいにあっさりしてました。
400円で買えた事もあっての読みやすさ、手に取りやすさを考えれば十分良かったです。単行本の方の表紙が趣味じゃなかったのが当時のシンプルな回避理由だったにしても。ファンタジー脳恐るべし。
もう1つの書き下ろしは、奇妙な信条でもって「ものをあげる男」となった城島の賢さと愚かさをこれまたストレートに表現していたな、と。最終的には「すぐに去る」事が必要なのに、分かっちゃいるけど留まってしまうという行動が…「負け」なんだけど、最大限にわかりやすい心情ではあります。貫けば格好良い(変わってる)けど、なかなか到達できないのよね、男って。…などと見透かされている事に思わず感心ですわ。うーんオレも無理!