時には4月に雪が降る

砂漠

砂漠

単行本の表紙に突っ込み入れるのも何なんですが、「誰」がモチーフなのかな?と少し疑問に思えたり。北村か鳥井か、はたまた西嶋か…どれとも違うような抽象的な感じですが、さて。
そもそも、この作者の青春小説という前提からして意外といえば意外で、チョイス的に意外な事と「まだ無かったんだ」という意外性ーアンビバレンツな驚きがあります。麻雀の面子として見立てられた東堂・西村・南・北村の4人と鳥井・鳩麦さんという「鳥」な登場人物も、いつになく遊び心に満ちているなぁと。実際のところ、麻雀している場面がかなり多い。そして西嶋の無茶な打ち方が笑いを誘います。
話は春・夏・秋・冬の4部構成とこれまたわかりやすい…でも凄い!春のボーリングには本当に手に汗握るし、夏の麻雀の馬鹿馬鹿しさには心打たれるし、秋の犬を巡るエピソード…はいつも通りっぽいか。人間みたいな犬の仕草とか。で、冬はメチャメチャ感動したなー。西嶋の言葉などは、これまでの彼の言動があってこその格好良さでしょうし。その他、散りばめられた小さなエピソードが一気に収縮していく展開の素晴らしい事!このカタルシスがいつも心地よいのです。
という訳で普通に面白かったのですが、『魔王』のような現実の問題に対する問いかけのような部分も多少あって、相変わらず「本気で考えているか?」と問われているような気持ちにもなったみたり。そういえば今回の題材だって、割とお話めいた設定とかキャラクター描写による構成のはず。しかし、そこを敢えて全力で向かい合って響く物語にする作者の姿勢は感じ取れたような気がします。お前ら、ライトノベルが面白いだと?俺ならこんな小説に書き上げるぜ、という気迫すらあると僕は思うのであった。
なんてことは、まるでない。