好きでもないくせに、優しくしないでよ。

メメントモリ (Edge)

メメントモリ (Edge)

表向きは「不器用な生き方しかできない人たちの物語」で「裏側はダメ人間たちが織りなす、めくるめく人間模様」という文句。まさしく物は言いようの、微笑ましいような何だかなーというようなストーリー。
面白いなと思うのは、主人公の幸運な部分と不幸な部分が同居しているところ。言葉を返せば、幸せって長続きしないというありふれた感じになってしまいそうなのですが…その点、山県というバーテンダーは中々良いバランス感覚なのでした。適度にヒーロー、適度に情けない、適度にご都合主義、適度に潔い、etc。場末のスナックという舞台であるからこそ起きる、大きいような小さいような出来事の数々もしっくり馴染んでいて。こじんまりとしたスケールが逆に何とも良い味出してます。
家出少女の亜須美と常連客の翔子、主人公を巡る2人のヒロイン?も変わったキャラクターしてます。社会通念上とはまた違うルールでのバックグラウンドを持つ女・翔子と山県のやり取りは、思いっきりツボにきました。シンプルに関係性を説明できそうでできない2人の関係に、悶々としつつも憧れてしまいそうに。変な快感です、これ。一方の亜須美に対する山県の態度、これは男の浪漫。そうそう出来る事ではない、というか自分だったら最初の時点でゴニョゴニョ…。幸福な受難ほど不幸なものはないが、人はどこか求めてやまないもの。恋愛という簡単な言葉は勿体無いような三角関係が素敵。正確には三角ですらもないですけど。
表紙の雰囲気からして、あるいはもっとキツ目の物語を想像していたのですが、内容そのものは期待を裏切らずで満足満足なのでした。ていうか、ジャケ買い野郎としては外せないオーラがビシバシ出てますよ、この表紙は!それでいて和む訳でもない・でも何故か憎めない人間達の何も「起こらない」ドラマ。たまに読むならこんな一冊を是非。