とりとめのない感想群〜奈須きのこを囲め!

空の境界 上 (講談社ノベルス)

空の境界 上 (講談社ノベルス)

空の境界 下 (講談社ノベルス)

空の境界 下 (講談社ノベルス)

「新伝奇」という定義以前に伝奇小説、は殆ど読んだ事がない。菊地秀行笠井潔も。『帝都物語』がそうだっってんなら、かろうじてほんのその程度です。よって、片手落ちではあるけどミステリの中からそれらしき匂いを放つ作品で文字通りこの2冊を囲んで遊んでみる事に。結構な部分でミステリ小説の体を為していると思うんですよね。
文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

いきなり「京極堂」シリーズですが、作風は似ているようで似ていないと思う。ここで言いたいのは藤乃んとか鮮花、式のシスター姿にグッと来るならこっちも良いよ!という煩悩全開な類似点のみです。そう、「女学院で繰り広げられる超お嬢様ストーリー」というアレやコレやで楽しみたいなら是非!といったところ。次に挙げる小説もまさにソレ。
緋色の囁き (講談社文庫)

緋色の囁き (講談社文庫)

人形館の殺人 (講談社文庫)

人形館の殺人 (講談社文庫)

半ば公式見解というか、本人自身が綾辻行人の影響を受けていると何かで言ったような気もするのですが。それくらい直ぐに連想させる作風なのは確かと思います。中でも「囁き」シリーズの独特な文章構成というか、カットインというか、その手法は(……めりー…… 同人ゲーム『月姫』などに(何て、あかい……)大きく影響を与えていますよね。 ……くりすます……)
『緋色の囁き』の場合、ヒロイン自身が殺人を犯したのではないかと疑念を持つ、といったところも似ています。帯の「魔女、魔女、魔女」ってフレーズに当時凄く惹かれたもんですが、こっちでも名門女学院の因習が醸し出す淫靡な空気というのは度々、強く刺激してくるモノがありますわ。『人形館の殺人』はずばり「人形」という共通設定だけですけど。こっちは、実際主人公格がやっちまいました系で、「館」シリーズとしては一番静かな印象を受けるか。
人形式モナリザ Shape of Things Human (講談社文庫)

人形式モナリザ Shape of Things Human (講談社文庫)

数奇にして模型 (講談社文庫)

数奇にして模型 (講談社文庫)

で、「人形」がモチーフの森博嗣2作品。しかし気のせいか、この手の作品は誰が犯人なのか謎というか被害者自身が犯人だったり語り部自身が犯人だったり酷く倒錯した内容が多いような。やはり、人形が操る・操られるといった要素を内包しているからでしょうか?
むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)

むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)

そして自らの拠り所さえ不確かな事も多い。「空の境界」では橙子と式が肉体と精神それぞれについて一度は死を体験している訳だし。こっちの小説は単に過去の記憶を旅する展開ですが、記憶が戻ってきても来なくても、今の自分として生きていかなあかんのよ、という話。ゲームで言えば『妹切草』…もとい『弟切草』にも良く似ています。
最終的に言いたいのは、話の筋が似ている・似ていないじゃありません。読んだ第一印象が、90年代における新本格ミステリの匂いを色濃く引き継いでいるなぁ、という事。よって、どちらかと言えば森博嗣京極夏彦よりも古臭いとも思うかな。新伝奇ムーブメントの到来というよりは新本格ミステリのリバイバル、そんな所です。