ナイチンゲール

女30代、つらい恋の傷を癒す魔法の言葉は?
―思いつきません!以上!…などと終わるのは何ですが。紹介分見た限りでは、かなり人里離れた場所で仙人めいた男たちとの交流で癒される心の傷、ってな感じなのかしらんと思っていたのですが。何のことはない、誰しもが大なり小なりの傷ついた過去を持っている訳で。すこし哀しいけど優しい人達とお話の主人公・東子の交流…というのは、男性の視点から見れば、実はむしろ東子のユニークなキャラクターに癒されるのかも知れません。日葉が、「あたり」つきの棒アイスキャンディーを見たように。
それから東子とすれ違っていく様々な女性達。精力的に働く女性、顔に不満をもっていた女性、「モトミ」の奥さんetc…それぞれが悩める女性の象徴なのでしょうかね。世間に認められる立派な女性の、裏側の苦悩。いや、男も女もないけれど、「ちょっと違う」という思いを淡々と綴っているなあとは思いました。軸となる恋愛についても、別れ際に思い出に浸るのは良くないやね、やっぱり。むしろ冷静に分析できてる方が怖いのです。いやいや、男って考えなしなのかなとも実感できるスレ違いエピソードが興味深い。
最後は少し新しい始まりの予感を匂わせつつも、あっさり終わっているのが良ろしいかと。たまには、こんな何も起きないけど少し変わった本も良いよね、って感じでした。正直に言えば装丁が森博嗣のVシリーズに似ているな、と思ったのがきっかけですけど<オイ ちなみにデザイン・イラスト共に同じようです。情熱大陸でも取り上げられた人でしたか、確か。まあジャケ買いとは言え、ほんの少し得したような読後感、って事で一つ。