大量密室殺人、爽やか系。

世界は密室でできている。 (講談社文庫)

世界は密室でできている。 (講談社文庫)

ルンババ・トゥエルブ…この語感だけで持っていかれそう。マジェスティック・トゥエルブのような素敵な響き。真実は少しほろ苦い。
まずは独特の文体に目が行く、もとい丸くなるわけですが。そうですね、例えるなら…今流行りのお笑い若手芸人的なノリ。独り完結系の不条理な笑いや畳み掛けるようなスピード感に個性的なコンビ、などなど。昔ながらの上方漫才のフォーマットとは少し世代を置いた面白さ、といったところでしょうか。
それはともかく、あらゆるチャンスを逃さない男・友紀夫がエノキと一緒に青春している真横で、ルンババが難解かつアホくさい事件とさらに良く解らない真相を暴いている、そんなごった煮の内容は素直に面白い。井上姉妹が福井に乗りこんで来ようとする前後は、なかなか良くできたホラーのような怖さもあるし、最後は何しかやる男・西村君も主人公らしくて良い!エキセントリックの皮を被ったオールマイティ美少女・エノキ、しかも年上というヒロイン像も魅力的ですねー。そして、ルンババの一連の通過儀礼こそが青春の旅立ちって奴さぁね、といった感じで微妙にすかしつつも爽やかな感触が残りました。
青春エンタとの事で、それはその通りの内容だなーとは思いました。ただし起きる事件そのものはふと考えればかなりシュールで少し残酷系?かも。そこを血生臭くならないようなテンポの軽妙さ、といった感じなのかな。個人的には、割としっかりミステリしているなーと楽しく読めた一冊。
…いや、待て。自分がこの本読んでてずっと気になったのは、知り合いに似たような2人組を思い出させるっちゅー事だわコレ。奴らもかなりエキセントリックやしなー。名探偵は流石に開業してないっぽいけども。そんな一冊でもありましたとさ。