富士見ミステリーと電撃ミステリーは何を紡ぐのか?
- 作者: 久住四季,甘塩コメコ
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- 作者: 佐竹彬,千野えなが
- 出版社/メーカー: メディアワークス
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- 作者: 田代裕彦,睦月ムンク
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さて、そうなるとつい比較したくなるのが富士見ミステリー文庫。今月はレーベル内でも特にミステリしていると思われる「平井骸惚」シリーズの最新刊が出ているじゃあありませんか。という訳で勝手に(脳内)対決!富士見ミステリーvs電撃ミステリーと洒落込んで読み耽った次第であります。
で、3冊全て読んでみると…「それどころじゃなかった」というのが、いの一番に思った事でした。何なのでしょう、この何処かで読んだ事のあるような内容は。文章表現の「癖」からラストでのどんでん返しに至るまで、何回頭に浮かんだ事でしょう、ある作家さん達の作品が。「これは綾辻ってるよなぁ」「■ぬ、て。某きのこさん?」「鮮烈なる森ミステリ〜」「魔女!魔女!魔女!そして京極堂」などといった具合に。そう、恐らくはライトノベル好きな人ならば割と領域が重なる事が多い、つまりラノベ好きなら読んでいるだろうなぁと思われるミステリー作家及び作品と、向きを同じにしている…というかメチャメチャ似ているやんけ!と突っ込みをいれてしまったのですワタクシ。
例えば、トリックスターズでは
- 作者: 森博嗣
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- 作者: 森博嗣
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とりとめのない感想群〜奈須きのこを囲め! - ROUTES4×1
で挙げた「空の境界」と「絡新婦の理」「緋色の囁き」がそれぞれ当てはまりそうな感じ。
さて、ではこういった内容あるいは手法の類似に嫌悪を抱いたか?と、言われると実はそうでもない。色々考えさせられます、むしろ。別の観点からするとhttp://d.hatena.ne.jp/kaien/20050622/p1さんの一連の内容などには、思わず「オオッ」と蒙を啓かされたりしましたし。SFかー…確かに自分も読まないし、「ウチらの読むような奴じゃない」と勝手に思い込んでる節はあるようにも思えますが、さて。
今回読んでみて感じたミステリ部分の「ありがち」感については、もしかしたらわかっててOK出ているのかな?とも思ったりする訳で。一方、講談社のファウスト/メフィスト系などはミステリー小説としての新鮮さ・目新しさに重きを置いているんじゃないでしょうかね、まだ。ミステリありきのファンタジー/ライトノベルと、ファンタジー/ライトノベルありきのミステリという違い…そんな感覚がある。電撃は独特の世界観の構築、富士見ミステリーはお得意の「LOVE」での味付けこそが肝要なのだろうし。今後、トリックやタネ明かしの部分での進化があれば、それこそ「電撃ミステリー」を、「ミステリー・オブ・富士見ミステリー」を冠する事ができるんじゃなかろうか?そんな戯言めいた想像を膨らませつつ。
以下、作品ごとの感想ー。
―分厚い。それが第一印象でした。むしろその重さに期待大だった訳ですが、意外にも読みやすくてビックリ。これは説明の丁寧さと変に難しく書こうとしていないところが良いのかな?そして、その作者名からしてなかなか刺激的な印象を受けます。わざわざQで始まるイニシャルと四季という名。…まあ深い意味はないでしょうが。どんなお話?かというと、
これは推理小説(ミステリ)を模った現代の魔術師の物語。
といった文句通り、いかにして魔術をミステリに組み込むのかが焦点となるようです。ミステリ部分については前述の通り、騙されはするもののサプライズはないという感触。魔術の部分に関しては抑えも効いてて良いとは思いますが、やはり最後の方でチラリチラリと色んなバックグラウンドが見え隠れするのは残念か…いや、こちらは仕方ないと思います。むしろ魔術/魔法でできる事、出来ない事を最後まできっちり線引きしていた上での主人公・周の見せ場、というのが上手かったなぁと。
そんな全体のまとまり具合に加えて、正直なところ判別し難い「7番目の欺計(トリック)」ですが…個人的にはぎりぎりアウト。これが野球拳ならば靴下一丁、といったところです。嘘。
最初読んだ時に違和感を覚えたのは、ゼミでの顔合わせ前に先生が言った「友情」発言と周・凛々子・理恵・いみなの4人で「ベイカー」に行った時の会話。後、最後まで周の顔が見えない事。これくらいかなー。で、2回目「そうと解ってから」読みなおすと、なる程色々面白い表現がありますね。…しかしですね、タネ明かしがバカ丁寧というか余計ですむしろ。何故にああもくどく説明しているのか、それが残念。最初の煽り文句と連動しているのでしょうが、それならば最初の方も邪魔。
この辺が、わかっていて敢えて付け足したのではないか?と思う点なんですよね…。それとも深読みすればさらに謎な部分があるんでしょうか?でなければ、ミステリー小説読んだ事のない人向けに対する余計な親切なフォーマットと捉えてしまえるのですが。
要はですね、もうちょっと気持ち良く騙してくれよ!と言いたいのです。キャラクターの描写は文句ないし、この手の叙述トリックは好きなものでして。ていうか、途中で分かったためしがないので。「ああ、こうだったのか!」と素直に唸りたい派…という事にしておこう。と、いう訳で「神の視点」を視野に入れた書き方が中途半端、でも面白いは面白い一冊でした。そうだなー…次があるなら、最後にもう1回周の「それ」を「反転」させるくらいのサプライズがあっても良いかなー、と。もちろんヒロイン5人衆の「誰か」でも!
- 作者: 高田崇史
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- 飾られた記号
驚異の新人が贈るサイバーミステリー“φシリーズ”堂々スタート!!
と、始まった新世代感覚の物語。トリックスターズが叙述トリックならば、こちらは物理的?なトリックを用いているのが対照的ですな。そして新しい概念と世界観が、結構新鮮です。大抵の場合、世界は異世界になっていようとも人となりは、割と普通だったりするのですが、この小説では違います。新世代の便利さと引き換えに、人間の、とりわけ子供達の性質が冷たくドライに変容している…とでも言えば良いのでしょうか。そこに違和感を感じるかどうかだと思うのですが、思わせぶりな言葉との相性はなかなか良いんじゃないでしょうかね。
肝である事件の不可解さと解決方法は、さながら光学迷彩に解け込んだかのような展開か、悪くはないかな?と。ただし油断すると脳裏によぎる森博嗣、みたいな。どうなんでしょう。
とは言いつつも、電撃的新人ミステリーとして本日のご注文はDOTTI?と聞かれたならば、自分はこっちの「飾られた記号」を推したいところ。これ!という決め手はないのですが、劇中にででくる名前のない喫茶店、これがなかなか良いアクセント。イラストがこれまた素晴らしい。いや、「ベイカー」も捨てがたいのですが。
それにしても、「言葉というのはすべて嘘だ……」という文句…「こっち」より「あっち」の方が似合っているんじゃなくて?少なくともヒサカのその言葉は真実であるんじゃなかろうかなと思う次第。
- 平井骸惚此中ニ有リ 其四
待望の4巻でした。有体に言いまして、舞台設定には感心・オチにはしんみり、といったところです。
年代上、関東大震災がぶち当たるというのは全然思いつきませんで、自らの無学っぷりというかミステリのほほん読みっぷりを実感。たまにはニヒルに「犯人はお前だ!」とばかりに閃いたり、いちいち重箱の隅までつついて伏線を看破してみたいモノですワ。しんどいからやりませんケド。それは置いといて、相変わらず平井さん家のお嬢さん方は素敵です。だんだん撥子嬢のウェイトが高まってきているような気がしないでもないですが…涼さんピンチ?
そんな2人を尻目に河上君、今回は年上の美人教師に一目惚れたぁ良い度胸してます。正直、いささか疑問のある展開でしたが、最後は骸惚先生がそれらしく説明してくれてスッキリ。そしてどんでん返しというか、語られる事のない真相…これには少し苦笑。いや、上手くまとまったー!とは思いましたよ、ええ。でもさすがにその道には、とある大家がドデンと居座っているというかぶっちゃけ2番煎じ。しかしこれがこの時代の、女の業と悲しみなのかもねと思うと、やはりしっくりくるラストなのかも知れません。
といった感じで、今回の3冊の中では一番オーソドックスなミステリで良ろしいんじゃなかろうかと。キャラ的にも積み上げてきた魅力がありますし。そんなこんなで、電撃vs富士ミス、判定ドロー!という事で、一つ。