上手くはいかない、でも美味しい。

女の子の食卓 1 (りぼんマスコットコミックス)

女の子の食卓 1 (りぼんマスコットコミックス)

食にまつわるほんわかエピソード満載なんですかね?と読んでみたならば。予想外に心をつく話が多いのなんの。ビターで酸味があって香辛料がちょいときつい、そんな作品なのでした。
例えば初恋のような、ほんのり甘い道程と迎える切ない終わり…みたいなわかりやすい形ではなく、もっと繊細でセクシャルな心理状態が上手いと思います。同時に、野郎的には「ぐはっ」とくる描写でもあるんですけどね。「お土産のディジョンマスタード」の最後などはもう、えも言われぬ感情がこみ上げてくるし。「紘也君の洗ったいちご」なんて、手触りが伝わってきそうな生生しさが、甘いというよりは甘酸っぱ過ぎるほどかと。
割とあたりまえの、ありふれた思い出かも知れないけれど、実は凄く記憶に残る食べ物。でもそういうのを思い出す時というのは、辛かったり悲しかったりする時でもあって…。そこから先は、まさしく思い出を「糧」として生きていくしかないのね、という一つの真理はともかくとして、食べ物「そのもの」のちからが印象的。前向きとかネガティブとか失敗とか関係なく、実感できる食事と思い出があれば、それで良いなと思うのです。