キン消しと鷹は青空に落ちる

魔王

魔王

うーん、今までの伊坂作品を読んできた中で、一番不気味に思えたかも知れないです。実直な兄と天才肌の弟という組み合わせは『重力ピエロ』と似たような感じ、こういう組み合わせ好きなのかな?と微笑ましくなってしまう程度なのですが…犬養という独裁者にも似た政治リーダーよりも、もっと恐ろしい「何か」に立ち向かう兄弟の姿はひどくリアルに見えました。終盤にいくにつれ、少しずつ緊張が高まっていくのが何とも言えず怖い。
いつも通りの、ちょいブラックなジョークが混じった会話は「らしい」ので、そこまで異質なお話じゃあないんですけど。結末が良くわからない描写になっているのは、潤也の性質上、仕方ないですし。例えば国民投票で○か×か、どちらに投票したか分かってしまえば御終い…て、そうか、弟の直感と兄の考察って此処に帰結するって事なんでしょうか?
そう考えると、実は読み直す程に面白くなるのかも。今までと違って、全体の流れがほぼ決まっている中で、ほんの一つの楔を打つというのが凄い重苦しく感じたのですが、ちょっとした伏線が繋がっているというのを見つければ「なる程」となります。うーん、兄の執念みたり。やっぱり伊坂幸太郎、面白いっす。