桜は春の終わりとともに。

青春俳句講座 初桜

青春俳句講座 初桜

女子高生さとみと美貌の俳人。ふたりが出逢う、不思議でやさしい「日常の謎

米澤穂信古典部シリーズが好きなら、間違いなく波長の合う作品。ありそうで、でもやっぱりなさそうな、ほんの少しの謎「具合」がゆったりとしたミステリです。
何よりも、季節という言葉を、もっと目で、頭で、体で感じさせてくれるような内容が素晴らしいというか。そもそも、春夏秋冬それぞれを実感する時には、もうその季節は終わりを迎えているのだというのが新鮮に思えるという事実。暑さ・寒さだけで区分している漠然とした過ごし方。俳句に欠かせぬ季語を知り、また実感する事で、古来から日本人が慣れ親しんだ折々の季節を改めて知る喜び―決して声を大きく主張しない花鳥先生の優しさと、さとみの素直さが相まって心に響きます。
「桜」「菫」「雛祭り」3篇のうち、1番気に入ったのは何といっても「桜」。普通は不可能犯罪でしょう、という感覚を少しずつほぐしていく作業が良かったです。キャラクター的にも老若男女のバランスがとれて申し分のない設定、是非次回作をと、思わず期待しつつ。