破滅の8月へ。

照柿(上) (講談社文庫)

照柿(上) (講談社文庫)

ジリジリと炙られるような真夏、忙しい合間に読んでみたらイイ感じに狂えそうな一冊。何が凄いか、最後の一行を読むまで「事件」の形がまるで見えなかった事。おまけに『マークス』に引き続いて登場した主人公・合田雄一郎の狂気は、上巻だけで既に臨界を突破して、もう後には戻れないほどに思えた…のは気のせいなのか間違いないのか。これが痛快などんでん返しで「謎は解けた!」な展開になりえようもない予感でいっぱいです。おまけに恋?一目惚れ?終わりに用意するにはあまりにもありふれたフレーズが、恐ろしく緻密に組み上げられた物語の核となって存在してるのが凄い。どうにもならない、とわかっていても続きが気になって仕方が無いのでした。
それら重苦しい骨格とは別に、「キャラクター小説」として捉えても強烈なまでに個性的な七係の面々は相変わらず痺れます。特に吾妻ポルフィーリィの自虐的な発言には心底痺れるものが!

おおかた、あのあと一課長を追いかけて≪堀田でイケます≫とでも言ったに違いない。すると、今度は一課長が≪堀田でイケます≫と部長に言ってだな、部長が警察庁に≪堀田でイケます≫と言ったわけだ。そして、最後は誰が言った、言わなかったになるのさ

もう顔がにやけるにやける。限りなくリアルで、非現実的な男達の結末を楽しみにしつつ。