そして開放へ。

照柿(下) (講談社文庫)

照柿(下) (講談社文庫)

暑過ぎる夏にピッタリだ。しかし困るのは、思考展開が高村薫的文体になってしまう事。感情と理性のスパイラルがぐるぐる渦まいては、しかし結局のところ脳内コスプレの如く本能のおもむくままに楽しんでいるだけではあるのだった。とにかく勿体つけては自虐的結論と流されるままの現実世界に埋没していくような奇妙な高揚感を味わえる、究極のマゾ小説ではありました、自分にとっては。
合田雄一郎の結末については何も言うまい、結局『マークス』での絶頂感と肩を並べるほどの夏の灼熱感が感じられたのだから。野田達夫も然り。彼が求めた色彩と、2人の主人公を狂わせた女・美保子の行き着いた先にとんでもない疲労感を覚える虚しさは圧倒的です。最後が、こうなのかと。
イムリーな人には本当にタイムリーに響く小説。夏に読んで発狂したい人は是非。12年振りな人もどうぞ。