奇跡をフィッシュ。

フィッシュストーリー

フィッシュストーリー

これまでの作品と、多方向に繋がりを持った短編集。これは今までに伊坂幸太郎を読んだ人向けですね。それでも面白いのはさすが、としか。
何といっても書き下ろしの『ポテチ』でしょう。大泣きするほどの感動話でもないのに、少しだけ胸をつくジーンとくるラスト。読んでいて、自分でもわからないんですよ「どっちが良かったのか」が。今村という人物の単純さと奥深さが、女性関係にも親子関係にも上司部下?関係にも良く現れていて凄く良かったです。特にだだ甘じゃない感じで。タッチで泣いちゃうのが可愛いっす。
表題作の『フィッシュストーリー』も良かった!何が凄いって、これだけのとんでもない設定を大真面目に面白く書ける作者の筆具合。こんな味付け、この人じゃないとできないと思う。まさしく、それこそ奇跡ってもんですよ。
後は、黒澤がやたら目立っててオオッと。動物園の話と村の話は初期の『オーデュボン』の暗さが感じられて、意外に懐かしくも面白かったです。そんな作者の過去と現在を感じつつ。