死して尚、この世に未練を残せしは

QED〈龍馬暗殺〉 (講談社文庫)

QED〈龍馬暗殺〉 (講談社文庫)

QEDシリーズは文庫で集めているので、どうしてもゆったりペースな読み方に。とはいうものの、帯にはノベルス+文庫で105万部突破らしく、おめでたい最新刊のようです。105という数が多いか少ないかと言えば「少ないなぁ」という実感ですが、ミステリの昨今の勢いからすれば、シリーズで長く読める分だけ幸せなのかも。
読んでみて印象的だったのは山村の惨劇と龍馬暗殺をつなぐ謎というものが、本当に最後の最後までわからなかった事、明治維新の根底が非常に明確に提示されたいた事などでしょうか。もちろん坂本龍馬という人物の実と虚の部分も面白い。薩長同盟成立の立役者でありながら当時の評判はさほど目立ってないところ、日露戦争時に有名になった真意などなど…それでも、「世界の海援隊でもやるか」という言葉には大人物を感じさせて。知れば知るほど不思議な男なのでした。
そんな龍馬を語る語り手にしても、今回は崇に加えて奈々の妹・沙織が参戦とあって一風変わった展開。というかですね、佐織のキャラクター良すぎ。幕末フリークで、崇の薀蓄にノリノリで合いの手をうつ場面がマジ可愛い。安政の大獄の時なんか最高。しばらくは「〜ぜよ」が抜けない日常生活なんだろうなーと思うと和みます。
QEDシリーズの中では、『ベイカー街の問題』に続く変化球的お題にも思えるのですが、個人的には『ベイカー街』同様こっちの雰囲気の方が好きかも。恐らくはすっきりと解けないであろう謎をあえて解いてみせる―その精神に敬意を表しつつ。