アイスクリームが溶けて、薔薇が咲く

日曜日のアイスクリームが溶けるまで

日曜日のアイスクリームが溶けるまで

清水マリコの単行本かぁ…プロフィール欄見ると、流石にノベライズの作品群は紹介してませんでした。題名見て、KANONん時のアイスクリーム好きな少女を思い出したのは内緒です。
読み始め、何の違和感もなく一般文芸していたので、「ああ、これだけの文章普通に書けちゃうのね」と思っていたら、中盤以降の展開が素晴らしく作者らしい持ち味を醸し出していて。日常生活とのかみ合わなさは妙にリアリティがあって、女性同士の何気ないやり取りと恋人を巡る関係などは中々面白いし説得力あったなぁと。それでいて、加速する狂気のようなお伽話。これは大人が素面で読むには刺激が強く、思わず目を背けたくなる言動にドキドキしっ放し。普通の恋愛モノと見せておいてコレかよ!というサプライズは間違いなくありました。
それにしても、26歳の女性が10才の女の子に戻る様は、少し微笑ましくて少し怖くて…少し悲しい。京子は何故、とびっきりの「扉の奥」と再会してしまったんでしょうか?幻とも実体とも知れない初恋の「アイス」君とのやり取りが爽やかなのに切ないのです、どうにも。結構、似たような小説ならば読んだ事もあるのですが、大抵は昔の初恋に触れて疲れてしまった日常生活をまた頑張ろう…的展開でした。それに比べると、一つ徹底的に違う過程を辿るのが印象的。サッパリとして痛い。独特の恋愛と青春を噛み締めつつ。