あなたの街に、塔はありますか?

塔の町、あたしたちの街 (ファミ通文庫 お 4-4-1)

塔の町、あたしたちの街 (ファミ通文庫 お 4-4-1)

ああ、何て不器用な作風なんだ…でもそこが好き。「塔」を中心とした学園バトルもの…というテンプレよりもむしろ、「塔」があるからこその営みや、町の人々の表情・葛藤をジワリと書き出そうとしているのが良いです。それに主人公・なごみや相方の華多那が感情を吐露させた時に見せる言動が乱暴だったり繊細だったり矛盾してたりするのが特徴的。特に華多那の「愛してる」という言葉は半分本気で半分言い訳な響きを含んでいるので、ただの百合推しな表現になっていないのはポイント。この辺の煮え切れなさが何とも味なんだよなーと思います。
戦闘描写は控えめだし、守代皆理の冒頭の主人公っぷりは何だったんだ?だし、『春は出会いの季節です』以上に続きを前提とした作りだし、面白いと言う前に続き読ませろ状態になってしまうのは扇智史という作家買いしているから仕方ない、是非続巻をお願いしますと願いつつ。