愛だろ、愛。

愛でしか作ってません

愛でしか作ってません

ダ・ヴィンチにチラッと紹介されていたので、いつかは読んでみようかなーと漠然と思ってた一冊。本屋で発見、表紙良いジャン・・・と裏表紙のペ−ジをめくると、これまた凄い絵がー!即買いしちゃいました。
サクッと読了。凄く良かった!エンタメ小説としては文句なしにオススメ。男同士のちょっとしたアレな描写に抵抗ないなら尚良し。BL好きとかやおい好きな女性の人が読めば冷静に読んでしまう内容なのかも知れませんが、自分にとっては語り手であるマリリンの言動がいちいち面白くて可愛くて困るなぁといちいち頬をゆるませつつ。
お話自体は実際にあったと言うBL業界最大手の倒産を巡る、現実のようなフィクションのような女性編集者の奮闘記と言ったところでしょうか。S潮社とかK談社とか「ミケランジェロ」のMファクトリーとか、明らかに実在する会社名がバシバシ出てくるのは生々しい。それでいて、移籍話をお願いしに行った先で出会う編集部長との恋物語に発展する…のではなく、部長同士のBL小説を後で書いてしまうのがBL女性編集の業の深さを感じられて面白いです。うーん、中々瑞々しい処女小説だ・・・って、小説書いてみたら?と薦めてくれた担当編集にまずこの手の妄想働かす思考回路が素敵。
で、業界最大手の女性編集の面々も良いキャラしてて、フィクションとしての出来に一役買っています。どうしても野郎視点からの読み方なので、編集さんみんな美女揃いの顔をイメージして読んでしまってゴメンナサイなのですが、BLに賭けた愛と情熱が彼女たちを美しく見せているんだよ!という事で一つ。でも、今までのクオリティを保つために一人でも欠けたら駄目なんだと移籍先を探す姿に、とてつもない絆と青春の香りが漂っていて。6人で納まった写真なんか想像するとですね、何ともクゥ〜!と痺れる訳なのでした。
後、やはり印象に残るのは作家との付き合いでしょうか。殆どは同人作家として成功した人をスカウトする仕組みなのですが、商業としてのBLの立場からすればやおい同人誌がバンバン売れているコミケ会場に複雑な視線を送るというのも頷ける話。担当作家(ヨドバシカメラ)が熱中しているジャンルに呪いかけるは、そのジャンルが衰退するかもという話に「やったぁ!そしたらヨドバシカメラはあたしのもの…うふふ」と喜ぶは、BL編集の苦労っぷりが窺えます。それにしても、遊郭ネタが流行り始めたらジャンルとして終わりが近いのかー…勉強になりました。それからBL遺伝子の話、少女漫画から目覚めるか少年漫画から目覚めるかの違い、などなど思わず納得するネタも多いですね。
まさに、愛と青春のBL編集。業界としては縮小傾向なのに、新規参入は多いという現状を冷静に分析しつつも希望を捨てずに頑張る姿には本当、感動です。感動なんですけどね、彼女たちの世界がどれだけ濃いのかという再認識も出来ちゃって微笑ましくもあるのでした。男なら迷わず読んどけ。そして、お姉さま方の評価はこっそりと知りたいなぁと思いつつ。