オーバー・ザ・ホエール

海をみあげて (電撃文庫)

海をみあげて (電撃文庫)

新人さんかと思いきや、『かぐや日記』の人でしたか。ほのぼのとした作風は言われてみれば成る程、です。空を泳ぐ鯨、とは何ともメルヘンな設定、個人的な感触としてはminoriジブリを足して2で割ったような味付け。問い詰めは抜きで。
10年前の大きな地震というと、やはり阪神大震災を連想する訳で、作者のプロフィールは兵庫県在住になってました(高知県出身)。ちなみにイラストレーターが兵庫出身らしく、何と言う地元コンビ…と変なところでツボに入ってしまってどうしましょう。帯の文句もインパクト重視の煽り文句ではなく、吶々とした掛け合いになっていて珍しい。そして薄いボリューム。とことん夏向きの短編、といった趣や良し。手に取りたくなる構成というのは、ジャケ買い・ビジュアル重視派にとっては見逃せないポイントなのでした。
お話自体も、変に盛り上げようとしない日常のドラマ…に溶け込んだファンタジー要素の塩梅がGOOD。真琴と洋助の関係はもうただただ微笑ましいですし。もしかしたら続きがありそうな匂わせ方もしているので、ほんのりと期待しつつ。