いつか過去に還るとき

ひなた橋のゴーストペイン (電撃文庫)

ひなた橋のゴーストペイン (電撃文庫)

大切なものをひなた橋から川に流すと過去へ戻してくれる少女がいる―というナビゲーターもの。『ラキア』とか『天使のレシピ』系が好きなら割といけるんじゃなかろうかと思います。
メイン3つのうち、最初の「Ghost pain」が一番好み。青春時代の挫折・絶望といった描写の「苦味」が何ともいえずクー!となる訳でして。そのまま鬱な終わり方したら一気にマズいのがポイントです。親友を挟んだ三角関係で、女の子はどちらかというと自分の方を見ているけど…という中で起きた過去の出来事とその顛末は、切なくてやりきれないけど、とても美しい。昔好きだった女の子、という幻想をビターに彩ればこんな物語になるのかな…?と。
で、巻末に珍しくイラストレーターの後書きがあったりして。なるほど、イラストレーターとして表紙を飾る事は多くても、この作品が初めての連載作品でありましたか。2つ目の『Forget me not』は確かに切ない。「変えられない事」の普遍的なテーマとも言えましょう。ちなみに原稿読んでからイメージして絵にする、という作業形式かぁ…絵と文章のすり合わせは前から興味あるので、こういった何気ない文章が舞台裏を感じさせてくれるので嬉しいです。
それにしても読書後の余韻の何とうっすらとした事でしょう。まるで各章のセピア色の過去がそのままイメージになったかのようで。報道部の面々もこれからこれから、というスタートラインで終わっていますしね。いつか橋の下の少女が「リバーズ・エンド」に行くような未来=続きがあっても良いかもね…と思いつつ。