鏡合せの青い鳥

神様の悪魔か少年 (Style‐F)

神様の悪魔か少年 (Style‐F)

かなり時間がかかったけど何とか読破。最後に進むにつれ、ペ−ジをめくる速さと目で文章を追う速さが上手くシンクロしてなくて眩暈を起こしてました。どうやら呼吸を忘れる程の…という読み方になってたみたいです。「現実」だけの欠片で、よくもこんな世界観を創り上げられるものだ、と心底感服すると同時に、ファンタジー要素がないが故の怖さをまざまざと突きつけてくる作品だなぁと実感。最高にワルで、最高に青春していて、最高に恋してる―なんて並べたくなるのに文体は中村九郎ですよ…って、やっぱ最高じゃん色々な意味で。覚悟は要るけど超オススメ。
ポイントは何と言っても「悪ガキ4人組」という軸でした。一連の事件や「摂政」など、おおよそただの高校生では実現できない言動を可能にしてしまった4人のバックボ−ンが深すぎます。それでいて、恐ろしく非現実的な舞台装置なのはある意味作者らしくて安心しますが。そんな澱んだ彼らに、時には女の子が一人舞い込んできたりして、にわかに恋愛模様が咲いたりされると、もうね。読んでるこっちが困るというか。確実にサークルクラッシャーなポジションでハラハラ。何より卑怯に思えたのは、中盤の「10歳」!いかんですよ、目から汗が止まらなくなります。それでいて予断を許さぬ心理展開なのですよ!普通の純愛モノやったら心置きなく号泣してましたわ!畜生!でも素晴らしい!
あと、ミステリ的なお話としても中々の展開で良かったかと。どこを疑うのか…という前提以前の立ち位置な人物が多いので、どう転んでも面白かったとは思いますが、意外に真っ直ぐきたイメージ。真相に関しては不意打ちでしたが、あまりにファンキーな恵関連のあれやこれやと独特の文体から推理するのはちょいと難しい…ですよね、きっと。
それにしても中村九郎作品にヤンデレは当てはめ難い…としみじみ思いました。だって病んでる世界でのヤンデレはもうヤンデレじゃないような気がするのです。さておき、今までで一番読みやすい上に現実世界のお話です。これは読んどくしかないでしょう。読んでどうなるかはその人次第。自分は途中で泣いて、最後で眩暈。でも青春小説としては至上の作品。とふらつきつつ。