うさぎは誰?

片耳うさぎ

片耳うさぎ

「成風堂書店事件メモ」シリーズの作者さん初となる長編ミステリーという事で手にとってみました。シリーズの方は『配達あかずきん』しか読んでませんが、ありそうでなかった本屋さんで起こるちょっとした「ならではの謎」が面白かったと記憶してます。そんな作者が殺人事件を?と思わせるようなキャッチフレーズとお屋敷の見取り図に加えて、小6の主人公・奈都が抱える不安な気持ちが相絡まって、始まりは少しドキドキするような展開に思えました。
大きなお屋敷に頼れる人がいない奈都。そんな少女に同級生のお姉さん・一色さゆりが登場すると物語はまた少し変化を見せて。旧家のつくりに興味津々のさゆりは、この機会に奈都のお屋敷を探検してみたい様子。果たしてその目的は叶うのですが、秘密の道を見つけて辿った屋根裏にはもう一人、見知らぬ「誰か」が居た―。翌朝、奈都とさゆりの枕元には「片耳うさぎ」のぬいぐるみが。屋敷にあげちゃいけない「うさぎ」を巡って2人の少女はどうなるのか?読み進めるうちに、ドキドキはワクワクに変わっていく感じで、とても良い読み心地です。
そして、終盤に再び訪れる「ドキドキ」と真相が何とも上手い!お屋敷の構造的な謎と、一家の人間関係を巡る謎が何とも温かく解かれていくのは素晴らしいし、らしい作風だなーと。そして奈都とさゆりの関係が、こう、良いもんです。最近になってようやく姉妹関係になった少女を描いた小説を読んでいる人にはオススメしたくなるくらいにね…と思いつつ。