文学少女版、曽根崎心中。

幸か不幸か、本を読む時間は増えました。ラッキー!だけどラッキーじゃねえよ!本当に心中複雑なんですトホホ。それでもめげないで文学少女まさかの新刊をドキドキしながら手にとってみたり。能天気過ぎますか?
さておき、このシリーズ、『神に臨む作家』を読み終えた時点で「番外編が出ても手は出さないだろうな」という気持ちになってました。だって、本当に素晴らしいラストだったから。余韻を壊したくないという感じで。実際、挿話集などは買いませんでした。
それでも今作を手にとってしまった理由は、題材が『曽根崎心中』だったから…でしょうか。歌舞伎の舞台で二度ほど見た以外にはそれほど詳しくないのですが、大阪で飲もーぜ、なんて時は東通り商店街をあーでもないこーでもないと歩いて、最終的にお初天神までたどり着くグダグダコースが近年の流行りだったので妙な親近感があるのです、曽根崎心中。何ともアレな理由ですね。まあ、商店街の出口にひょっこりと境内への道があって気付いたらお初天神へようこそなノリが好きなんです。
それにしても、素晴らしいですねこの『初懸』は!遠子先輩がいないなら意味ないじゃん、という予想を良い意味で裏切ってくれました。「似てないのに似てる」新ヒロインの菜乃が今後も引っ掻き回してくれそう。脱ぎっぷりも良いですね!体型的には文学少女OK。事件に対するアプローチも違うようで同じ、かな?成長した心葉とのコンビがまた良い感じ。最後の台詞は、逆に告白のように聞こえて、頬が緩む緩む。結末がわかっているからこの気になる2人の行方、ですね。
曽根崎心中をモチーフとした題材は、これまで同様、人の暗い部分を物語でなぞらえた進行で、すれ違いの悲劇がやはり痛ましいです。ちなみに直近でみた歌舞伎だと、改変されたストーリー展開でした。「死ぬんじゃねえぞ」というラスト間際の台詞が印象深かったので。それでも死を選択する2人の、この世への未練を残した演技が素晴らしかったです。曽根崎心中の肝ですね、やりきれなさというか…死ぬ事はないよ、でも死ぬしかないんだという不条理。でも、そうじゃないんだよ、と強く言ってのけた菜乃にも感動しました。お初と徳兵衛にならなかった理由も美しくて。ハッピーエンドな曽根崎心中、良いんじゃないでしょうか。
そんなこんなで大満足な1冊でした。新たな文学少女(見習い)の誕生を祝しつつ、心葉の元カノ勢暗躍に期待したいところです。いやマジで。