七不思議はないけれど?

マリア様がみてる 34 リトルホラーズ (コバルト文庫)

マリア様がみてる 34 リトルホラーズ (コバルト文庫)

すわ新シリーズか?と思いきや、冒頭のごきげんようで始まる前口上もないし、外伝的な短編集でしたね。どのお話も、投げっ放しで終わる物語が多くて、意外とホラーものの体を成しているなぁと妙に感心しました。個人的に気に入ったのは「チナミさんと私」です。千波さんが帰ってきた後にも続く、白昼夢のような笑い声のラスト、とても印象的です。
幻想的でいて退廃的のような「ワンペア」も良い感じなのですが、納まり良すぎて美し過ぎて出来すぎのような気がしないでもないかな?とはいえ、秘密の関係性が続くと考えれば非常に美味しい物語でもあります。これで名前がヒスコハだったらやばかったかも知れない(何が?)。ユキチとのとりかえばや物語どころではない美しさと残酷さが身につまされる部分でもあったり。
「ハンカチ拾い」は、お題目そのものが懐かしくて堪らない!昔良くやったよなぁ、と本気で遠い目しちゃったよオイ。出会わない運命を次に繋げるのも、また美しい絆の形ですね。見えない姉妹の契りのようで。
そんなこんなで、全編において何とも言い難い感情に囚われる不思議な短編集でした。『マリみて』シリーズがかつて持っていた幻想的な世界観を再び垣間見れるという点では素晴らしいと思います。と同時に、そんな世界観を華麗にぶち壊してくださるのが、現黄薔薇様こと島津由乃さん…というのはこれまた素晴らしい。もう何だろう、各所での扱いが色々楽しいというか酷いというか、さすが黄薔薇革命を3回も起こした人は格が違う。これからも何かしら暴走するんだろうなぁと生暖かい妄想を抱いてしまうのでした。
そして最後に。リトルホラーズ?で、祐巳が菜々にサラリと発した殺し文句。これには思わず胸が熱くなりました。何気ない言葉のようでいて、蓉子から受け継いできた思いだとか祥子と苦楽を共に経験してきた中で祐巳が実感してきた、凄く生きた言葉なのだと思います。読んでいるこちら側としても、今までの歴史がふと脳裏によぎって…「ああ、本当に成長したんだ」なーんてジンとくる場面でした。という訳で、由乃さんガンバ。カムバック黄薔薇の威厳!(おおよそ無理とは思いつつ)