デンジャラス小市民

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

何と言っても題名が目を引く、この一冊。春期限定、今が読み時ってんで購入しましたが…件のいちごタルトに関しては、かなりあっさりその姿を消してしまう事もあって特に季節感を感じる内容という訳でもありませんでした。しかしこの本におけるタルトの行方とその処遇については、ある意味最大の謎。あくまで甘い物好きの個人的な見解ですが。
主人公は1歩歩けば謎にぶつかる少年・小鳩君と、甘いものには目の色変える少女・小佐内さん。過去、自らの特性によってイロイロあった為か、手に手を取って「小市民」の道を歩もうとする2人…に立ちはだかる様々なミステリー!といった内容は、なる程小さな謎を熱く解いても大きな話題にはなるまいて、というライトな感覚を受けました。
その一方で、こういった学生時代の小さな秘密を、誰かがあっさりと解明していくというのは、自分自身に照らし合わせると、ちょっとした「怖さ」があるようにも思います。や、これといった悪戯を働いた覚えはないんですけどね、実際のところ。
ただし、人によっては迷惑でもある事例だって多いのは事実でしょう。その方向で散々嫌な思いをして事もあって小鳩君は小市民を目指す事にしたのだろうし。それでも解いた方が良い「小さな謎」だってあるのだろうし、最後の事件?ではそのように動くのは正しいと思います。
しかし「本物」というのは小佐内さんのような女の子なのですよ、これが。静と動の切替えに業の深さ…うーん、この一冊で終わらすにはもったいない人物かも。
見た目や普段の立ち居振舞いは、2人とも極普通であろうから、問題はやはり性分からくる謎解き&フクシュウの魔の手を如何にくぐっていくのか、ですね。その姿勢が間違っているのか正しいのか、そこら辺をいじいじしながら読む、そんな小説でございました。