それは、「夏こみ」で起きた小さな奇跡のお話。

乃木坂春香の秘密(2) (電撃文庫)

乃木坂春香の秘密(2) (電撃文庫)

「木漏れ日の下、紅茶片手にお嬢様のシークレット・ラブコメをどうぞ(はあと)」というキャッチフレーズで登場した第1巻、時期的には「アキバ系」という言葉がそろそろ食傷気味にも思える中であったのをぼんやりと記憶しております。そんな中で、ど真ん中にそのフレーズを使ってきた、まっこと直球勝負の作品。ちなみに当時は、表紙でジャケ買いした口です。*1
ヒロインの乃木坂春香は、学内で取った異名が「白城の星屑(ニュイ・エトワーレ)」との事で、ここからもう超お嬢様のごきげんような世界が漂ってはいたし、非の打ち所のない彼女が唯一持つ「秘密」がまたソッチ系。そんなヒロインと主人公・綾瀬裕人の出会いはカレカノっぽい。普通、これだけ突っ込まれやすい材料でお話作ると読めたもんじゃないと思うんですがね、意外と鼻にかからず読めました。
それは恐らくは作者のバランス感覚かな、と思ったりします。やたらめったらゲームやアニメに詳しい訳ではなさそうではあるけど、その分小説の中では一から世界観の構築に務めている所が逆に良かったのかも。なかなか「イノセントスマイル」なんて雑誌名は思いつかないなぁ。自分だと電脳世界で人形さんがハーウィ〜なんて高いキーで歌いながら素子ー!って叫んでいる某アニメが連想されて、とてもとても。思いつきで言ってみましたが、案外本当に「いのせんす」なんて略で呼ばれていてもおかしくないかも。それに加えてお嬢様の生活を上手く表現しているところが良いのかな。ピアノに紅茶に、なかなかアクセント効いています。
で、今回の2巻はどうかいな?と思っていたら、春香の秘密の趣味に関する部分は少なめなものの、要であるところのラブコメ部分は…何かこう、悶えるものがありますな。さながら牛歩戦術のような2人の進展具合に、外野席からは野次の声がっ!思わず自分も野次りたい、みたいなー。でもそれが良いんです。脇役もなかなかに個性溢れているし、家族も春夏秋冬揃った訳ですし。これからがまた注目!な一冊でしたー。

*1:表紙及び本文イラストは、しゃあ氏。言わずと知れた猫バス亭。余談として2巻の登場シーン、何気に前代未聞の描写だと思うのですが、どうか。個人的には爆笑モノだったんですけど。