ブラッドリー・スピン

富士見ミステリー文庫内において「ミステリ」という分類に属する小説は少ない…という前置きはともかく、正統派ミステリと言えるであろう「GOSICK」初の短編集は、主人公・久城一弥とヴィクトリカの出会い前後を描いた5篇+α。
短編とは言え、インパクトのある事件が多いのが特徴的。一弥もヴィクトリカも、まだまだ固いイメージなのが逆に新鮮で面白いですし。外伝とか番外編などは、サブキャラクターにスポットが当たるのが楽しみの一つですが…アブリルの転校話などはヴィクトリカの素性にも負けない謎と驚きがあって良いです!今回明かされた要素が、本編にフィードバックしていくとアブリルも印象強いキャラになりそうな予感。あくまで予感。
それでもヴィクトリカの一人勝ち・独壇場なのはなかなか揺るぎそうもないな、とも読んでて思う訳ですけど!天才にしか許されない可愛さをたっぷり堪能ー。声さえ戻れば、天下さえ取れそうな女の子…でもそんな不完全な部分が、また良いんでしょうなぁ。そう簡単にメディアミックスさせまいぞ!というメッセージなのでしょうかねー。
という感じで、本編に負けず劣らず面白いと思える短編集、という予想外の嬉しさがあります。この辺はさすが富士見、オーフェンフルメタを振り返るまでもなく上手いですね。短編の謎は短編で解き明かされる最後の引きも、なかなか凝っていますしね。答えが出るであろう次巻までには考えてみようかいな、と思ったのでした。