ブラック・リリカル・ホワイト・ミラーズ・レビュー

白い花の舞い散る時間 (コバルト文庫)

白い花の舞い散る時間 (コバルト文庫)

うーん初めてかも、コバルト文庫を自ら手に取るのは。少なくとも『マリみて』以降は無かった事なのでした。ジャケ買いなのは間違いなくて、水上カオリさんのイラストが素晴らしい。同人誌でもそうですけど、セピアめいた色彩と可憐な少女の組み合わせが良いのです。こっちの表紙絵、電撃文庫の方より好みかも。
肝心の小説は、「ロマン大賞初、今年最高のミステリー!」と踊っていて、こちらもまた中々の誘い文句ですな。チャット仲間のオフ会、というと身も蓋もないかも知れませんが、まあそんな始まり。
そんなファースト・インプレッションから、数日。読むのに結構時間かかったのは、割とボリュームあるのと、まあゲームなどに忙しかったからですが…素直な感想としては、「看板に偽りなし」と言って差し支えないほどに良い!という事です。いやー、少女小説ならではのミステリ、堪能しましたわ。
5人の少女が、互いに名前をチャットで使用しているハンドルネームとは違う、第2のハンドルネームで呼び合う事で、一体誰が誰なのかわからないままに館に集まり親睦を深める。…こういった流れは『十角館の殺人』を連想させましたが、中盤〜ラストにかけての展開は『十角館』と同等か、それ以上の衝撃度があるかも。一人の何気ない発言からコロッとお話の質が変わっていくのが面白いし、これはまさしくライトノベル・ファンタジー少女小説であるからこそ。加えて、ミステリからアプローチしてみても充分成り立っている。そこら辺の混じり具合が凄く良いのではないでしょうか。
そして何と言ってもラストがなー、コバルトなどもろくに読まない自分ですが、こんな結末こそが少女小説の醍醐味なんじゃなかろうか?とぼんやり思う訳ですよ。で、10代の少女は危うさとかセンシティブな心とか、独特な感情をビシバシと発露させていく、と。的外れな推測で申し訳無いけども。幼稚といえば幼稚、でもモヤモヤとした快感…少し甘酸っぱい感情がむさい野郎にも湧きあがってくるのでした。うーん、キモいな俺。
恐らくこの1冊で完結なんでしょうが、書こうと思えば続きも書けるところが悩ましい。事の顛末は気になるんだけど、シリーズ化すると非常に陳腐な話になりかねないとも思える訳で。5人の行く末、読めばきっと気になる事は間違いないです。でも、ここで終わらなければならない物語なのかも知れません。