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赤緑黒白 (講談社文庫)

赤緑黒白 (講談社文庫)

12月といえばクリスマス、クリスマスカラーといえばこのタイトル。Vシリーズ完結編は最もチープにして最も豪華な中身でした。森博嗣作品に触れたのは結構遅め、文庫で出た『黒猫の三角』を読んだのが初めてだったので、Vシリーズだけは文庫で追いかけたせいか随分と感慨深いなぁというのが実感です。
まず事件の犯人がほぼ一瞬でわかるのが「チープ」な部分なのでしょうが、何故やったのか?という動機部分に最高のカタルシスが隠されていたので全然どうでも良くなってしまいました。その反面、いつもの4人組である保呂草潤平・瀬在丸紅子・小鳥遊錬無・香具山紫子のからみというかグループ行動が少ないのが少し残念。4人でのクライマックスがあっても良かったのではないでしょうか。ちなみに「赤緑黒白」というのは、この4人を指している言葉でもあると思いました。
保呂草はその分フルコース的な女性陣との接触がうらやましいというか何というか。騎士道精神なのか大泥棒的手法なのか、はたまた名探偵の宿命なのか?そのどれも持ち合わせる彼の特異性と、紅子の多面性は最後まで破綻する事なく上手く回り続けたのが素晴らしい。錬無と紫子は、ユニークなキャラクターに隠れた人間性に溢れた情緒をシリーズごとに見せてくれたし。2人同士の組み合わせとしては凄い良かったです。
そして全然終わりじゃない物語は、『四季』とGシリーズに連なっていく、と。それでも保呂草が語る4人の物語はこれで幕だと思うとやっぱり寂しいかな。お芝居以上にお芝居めいた事件と解決編にまたいつか酔いしれたいと思いつつ。