恋ノ花の咲く惑星で

空ノ鐘の響く惑星で〈9〉 (電撃文庫)

空ノ鐘の響く惑星で〈9〉 (電撃文庫)

いや、凄い。何が凄いって、主要キャラほぼ全員に降って湧くわ湧くわの恋バナストーム。そして意外ともいえる今巻の主人公。読むまでの期待感が色々な意味で裏切られたと言っても良いくらいの展開でございました。
逆にいつも通りな人物を挙げる方が早そうではなかろうか?という事で、まずはライナスティ。相変わらずの多才ぶりを発揮しつつ、ディアメルいじりに余念がないのは流石です。今回は「講座」の方とも連動しているし。まさか、その格好とは…全体的にシリアスな『空鐘』でやられるとミスマッチ、でも面白いかな?ファンタジー・王宮での舞踏会と、世界設定的には違和感ないはずなのですが。
変わりないけど妙に気になったのはベルことベルナルフォン・レスターホーク。そうだったんだ…まあ野郎でつるんでる方が楽だし楽しいタイプって事ですね。それでもベル×フェリオなんてビジュアル的には良いんじゃね?とか思い浮かべる自分の脳は元から腐り気味ではある。
で、肝心のフェリオの「お相手」は?という最大の焦点。正直、ますます混迷の度合いを深めているような気がしてならない。これまで散々言及してきた事がもはや明確になったと思うのですが、つまりウルクさんはお色気担当なのだ、と。清楚な容姿が紡ぎだす仕草・言動・思考そのものが何とも艶かしい。一方、昇華しても失われない健康的な魅力と、微笑ましい可愛さ、痛々しいほどの健気な性格…正統派のヒロインはリセリナというイメージがますます強くなったような気がします。そんな二人の恋愛同盟は、決してどう転ぶかわからない要素満載。想いはもはや解き離れているからこそ、暗黙の不可侵条約がやぶられる出来事はこれからもあるでしょうし。具体的にいうと、「リセリナ昇華で大逆襲in夜の寝室、その時ウルクは見た!」みたいな。
幸せに水を差す要素であった仮面の男についての予想は、半分はずれといった所でした。ビジュアル的に「あの男」だと思ったんですが、何と別の形で絡んできて驚きつつも面白い!意外に好きなんですよねー、ああいう心底堕ちたキャラ。
そんな敵側さんサイドにおいて、まさかの主役があの娘だなんて言うのは…思わず感心しちゃったなー、と。そう来るのか!という驚きと、ある種の「憎めなさ」が堪らないというか。これまでの「敵」もそうなのですが、生理的に駄目なのじゃなくて、どこか一本芯のある悪党として描写されているのが良いのです。
そんなこんなで。前巻から二ヶ月、膨れ上がった期待感に十分応えくれた部分と、微妙に抑えが効いてしまった部分とが入り混じった展開でしたが。オチが予想だにしなかった事を含め、素面では読めない悶絶級の描写を考えれば最終的には満足満足、の一冊なのは間違いない!です。ほほ染め男性陣のイラストが多めなのも密かなポイント。うそ。これで表紙がドレス姿のヒロインズであったならばその時歴史は動いた、のでしょうが。法則通りの野郎二人組で相変わらずの硬派ぶりに痺れます。国内の状況整理もあらかた済んで、未解決組の希望と不安に満ちた旅路を次回の楽しみとしつつ。