マーチングダイアリーNO.2

まさかまだ続いていたとは!の「榊ガンパレ」最新刊。気が付けば10冊目ですか、かなりの長編シリーズになったものです。今回は年表つきで、総まとめ的な感じ。
時系列でいえば、「日常2」とあるようにまだ決戦前の頃のようです。撤退戦の後が読めればと思っていたので、時間の巻き戻しは少し気になってしまいましたが、これまでの流れの隙間隙間を埋めるようなエピソードが多いのが印象的。さすがに似たような話やオチにはなってはいるんですけどねー。それでも、ガンパレキャラの魅力を十分に引き出した会話・心理描写と躍動感のある戦闘シーンは面白い!のでした。
などと言ってはおりますが、大元であるゲームはやった事がなくて。自由度が高い?くらいの知識しか今でもありません。原作アリとはいえノベルスとして非常に良い作品だよなぁというスタンス。ゲームに込められた豊富な人物像、世界観、設定を小説に再構築しつつ自分の色を出す、その加減が絶妙なのでしょう。
前作「もうひとつの撤退戦」で累計65万部突破と、珍しく数字でプッシュしているのが特徴といえば特徴。ゲーム自体の評価や2次創作への波及…ジャンルとしての人気や熱狂具合は素晴らしいものだった事を含めての数字とはいえ、榊ガンパレとしての確固たる面白さがシリーズ続刊の最大の理由でしょうしね。
という訳で、ノベライズ作品だからちょっと手ぇ出しにくい…なんて事はない!普通にオススメです。意外なポイントとしては、どの巻から読んでもOKなシリーズである、という事。ゲームやってる人は言わずもがな、やった事ない人にとっても一から読まないと分からない伏線は無いと思うので。逆に、今からなら結成初期の話を描いた『episode ONE』『episode TWO』を先ず読んでみるのも面白いだろうし。…と、今更ながらの一人キャンペーン状態なのでした。個人的には↓が一番好き。『決戦前夜』から続く熊本城攻防戦もクライマックス、主にパイロット側の視点で描かれた物語。
この1冊だけは思い入れ深いというか何度読み返してもジーンとくる程。ラストのシーンなんか滅茶苦茶好きなんだけど、次にページめくるとイラストレーターさんの後書きがよりによってこいつかい!というキャラチョイスで激しくミスマッチ。それが笑えて、逆にあっさりさっぱりとした読後感を醸しだしてくれます。
戦闘描写に関しては、各機が既にエース級の実力になっているのでシリーズ全体で見ると強烈なインパクトはないかも。これはスター・ウォーズ的な現象なので仕方ないところ。過去編を最新技術で見せる事によって生じる矛盾点のような。それでも、ゲームでは表現しきれない部分が凄く魅力的。滝川の高低差の激しい戦いぶり・感情の揺れ動きや、壬生屋と瀬戸口の関係、厚志・舞のじゃれあいなど3機ともに独立した作戦内容の中での面白さ満載。サブキャラクターでは、紅陵女子α小隊の佐藤隊長やら独立混成小隊の島村百翼長などが良いアクセントになってるし。両者共に、後々の出番があるところがまた憎い。
そんなこんなで。決戦以降は、共生派が深く絡んでメタな方向に進むので青春ストーリー的な清廉さを楽しみたいなら断然『熊本城決戦』かと思います。是非是非。