春をまたもうひとつ。

なかなか衝撃的なデビュー作『白い花の舞い散る時間』がまだ記憶に新しいところでのリリカル・ミステリー第2弾登場です。個人的な解釈としては、「リリカル=お嬢様」的な指向性ではなかろうか?というところですが、さて。
まず何といっても、「名」に籠められた甘やかな約束というのは堪らなく良いな、と思う訳でして。非常にクローズドで、シ−クレットかつスペシャル。そんな二人だけの決め事が醸し出す、とある違和感から始まるミステリーはある意味、予想外に告ぐ予想外の展開。ミステリとしてのトリック・意外性という意味ではなく、話としての落ち着きどころが。これは前作があってこその感覚かも知れないので、2冊セットとして読んでみるのが良い…かも。陰と陽、前半と後半の印象が本当に対照的なのでした。
それにつけても、女の子同士の酷くあっけない「怖さ」には、いまだに慣れないというか新鮮というか。『マリみて』でも、知り合いだった年下の女の子を見つけて…みたいなお話があったように記憶しているのですが、これがまたあっさりと書かれてて。「ああ、そうだったんだ」みたいな。もちろん、全体としては起伏に富んだ感情の揺れ動きだとか葛藤があるにせよ、それとは関係なしにばっさりと抜き出してくる感性が凄い。『春待ちの〜』では逆に起点としての役割になっていますが、普通に考えるとそれでも怖いっす。舞さん、マジ怖!
そうして一通り読んで、また読み出すと今度は各キャラの魅力がグッと増して良い感じになっているのがこの作品の良いところで。心情をつかみつつ序盤を読むと全然違います(ああ、当たり前か)し。実家から送られてきた蟹をどうしようかと困り果てる程に膨れ上がった冷蔵庫のような不思議さ(冷蔵庫には何が入っている?「何が」?)と、少女たちの愛らしくも鮮烈な内面に、じんわりと満足しつつ。