プラハの春にヴェニスの夏 シチリアの秋 ニースの冬

GUNSLINGER GIRL 6

GUNSLINGER GIRL 6

物語に登場する義体の少女達には、いつだって残酷な救いが有る訳で。表紙の女の子・ペトラに用意されたのは…うーん身長でしょうか?バレリーナとしての彼女が望んだものが、全てを忘れ去った「今」手に入る、という偶然?運命?に切なくもジーンとくる何か…といったところです。
それにしても「ペトラ」に「サンドロ」とは…。いや、ヘンリエッタとジョゼをメインとして始まった時から、何時かは登場するかもと思っていたフラテッロではあるのですが。面白いのは、『idle talk』においてヘンリエッタが陥った身体状況をペトラの過去に使っている事。あと、ビジュアル面の違いで思わずニヤリ、あるいは苦笑。まさしく、誰コレ?な感じ。作者さんの描く赤毛の女の子なんて本当に珍しいというか見た事ないかも。
という訳で、かなり刺激的なフラテッロが登場して今後の展開が楽しみ…なのは楽しみなのですが、同時に「終わり」を連想させる名前でもあるので少し不安もありで。まあジョゼが何気に一番怖くない?というエピソードとペトラ・サンドロの微笑ましいラストを読む限り、また『idle talk』とは違う結末が待っているんだろうなー、とぼんやり思いつつ。

唐突ですが。ガンスリンガー・ガールの読者を、おおよそ2種類にわける事にするならば。自分なら「ガンスリガンスリとして読んでいる」人と、「ガンスリを漫画として読んでいる」人と分けるでしょう。
前者は、同人誌での『ガンスリ』も一通り、『BSF』は初回版もドリキャス版もプレステ版も再販分も持っているような、商業誌以前から相田裕ファンでしたというタイプ。後者は、アニメ化をきっかけに…とか本屋でたまたま…とかいう出会いを経るコミックス派のタイプ。
両者に分けた上で、『ガンスリ』における倫理観・リアリティ・モラルの問題や、内容そのものから受ける違和感・生理的嫌悪感などの問題が、ここ1〜2年ネット上の話題として増えてきている理由を考えると、後者の「ガンスリを漫画として読んでいる」人が多くなっているから、ではないでしょうか?それが何とも感慨深く、興味深いのです。
何故ならば、前者のタイプはそういった違和感や疑問点については何とも思わないのだから。「イタリアと少女と銃」がはじめからあった。リコの日々感謝感激チェロ・メイドもアンジェリカのパスタの物語もトリエラのツンデレネクタイツインテールも。ネクタイはなかったか。ちなみに電撃大王で連載が始まる時「作品としては実写をイメージして」という言葉に苦笑したものの、それまでの淡いタッチから一転、硬質さを増した絵柄には作者の決意を感じ取れるくらいに衝撃的ではありました。
しかし、「こういう物語だから突っ込むだけ野暮」というスタンスだからといって、何も感じていない訳じゃない。お話の罪深さを分かった上で受け入れている自らを、何処かで罰してほしいと思う部分があるのではないか?少女時代という特別な美しさを愛でる喜びと犯罪性は同時に存在していると自覚しているのではないか?
つまりは、『ガンスリ』の少女たちが、そんな矛盾点を我々に突きつけてくる程のキャラクターであるという事。見られているのは実は読者の方である、とも言えましょう。
作者の同人誌『VIEWPOINT』の「女の子を描くということ。」というコラムめいた文章を読むと、かなり明確な表現があったりします。

自分で自分の作風を説明するときに良く「自分の特徴は女の子があまり笑わないことです」なんて答えることがある。それは「苦悩する少女」という意味もあるが「媚びない少女」という側面もある。
普通救済としての生贄の場合、少女は大人の欲求にこたえてにっこりと「笑わされる」。でも、自分にとっての少女は基本的に「たたかう少女」だから、もし要求されるがままに微笑んでいたら、それは抵抗しない少女になってしまう。笑って欲しいけれど笑って欲しくない矛盾。
自分が絵を「媚びさせたくない」理由がもう一つある。自分でも少女に救済を求めることに罪悪感を感じているため、一方で少女に抵抗を求めて罪の意識から逃れたいのだろう。ここらへんは様々に矛盾していてなんとも不可解な心理だ。

読んだ当時はピンとくる内容ではなかったのですが、今『ガンスリ』と共に考えると、成る程自覚的だったんだな、と。そんな矛盾点に惹きつかれて止まない「前者のタイプ」である読者の姿を少女達から通して感じ、後者の人々は違和感なり嫌悪感を抱くのかも知れません。作品そのものが鏡となって映し出す現実の我々の姿…何の照らいもなく少女たちに萌えてみせるか、はたまたその存在を許す構造そのものに疑問を抱くか…それこそ二通りなどでは済まない答えがあるのでしょう。
自分は?と問われたならば、作者の言葉を借りて一言、『まあ、好きなんだからしょうがない』と言うしかない…程にはやっぱり好きですよ?ガンスリ