恋に恋で恋した恋は。

荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)

荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)

…高っ。財布から小銭を探りかけた手は逡巡の後に千円を一枚、いつか小市民の星を掴むまでもなく小っちゃいオトコではあるのでした。しかしコストパフォーマンスは悪くなかったので不満はなし。何度も読み直してしまうような類の小説です。
大人になった荒野が語り手を務めるかのような文章は、やっぱりどこか少しノスタルジックで。おぞましくも懐かしい子供のような大人のような曖昧な刹那の時代を、ほんのり振り返るような…凄くゆったりした空気。陽炎や、空にたなびく煙を目に追った時に、ふと思い出したりする何とも言えない感情に似ている。うーん、少し言葉にしにくいなー。
それでいて、お話はきっちりお話してますし。実は後半、読むにつれ少し不安にさせてくれる展開があったりしてドキドキしたり。山野内派までは微笑ましかったんですが。ハイ、リシャール入ります。それは別として、最後がまたエライ引きよう、しかも続かなくて第三部は17歳の物語?うーむ、どうなるんでしょう。生き方として対極の考え方を見出した二人、上手くいきそうでもありすれ違うしかないかもなさそうでもあり。
後は、ちょっとした街のこまやかな描写とか、小さな女の子達のはじめてのエピソードとか何も考えずに読むだけで十分面白いですね。荒野の黒猫ちゃんっぷり…猫のような扱いだとか猫みたいな性格であるとか触られる事に敏感なところとか…は今回、何故か前向きな雰囲気をまとっていて。「あー成長したのね」などと思えてしまったり。とにかく、個人差はあれど何がしかの印象を残す一冊だよなー、と思いつつ。