封印指定たぬきvs手乗りタイガー!

たぬきつ!(1) (ファミ通文庫)

たぬきつ!(1) (ファミ通文庫)

とらドラ!1 (電撃文庫)

とらドラ!1 (電撃文庫)

今、時代は獣っ娘。と言わんばかりに似通ったデザインがとてもインパクトのある両作品であります。二冊並べればちょいと和む感じ。しかしてその内容は、かたや流行の最先端、かたや王道懐古の香り豊かな、まさしくライトノベル古今東西を表すに相応しいものを感じる…事もあるようなないような?
まずは『たぬきつ!』ですが、タイトル通り狸と狐、両者が四国でファイトーな展開の物語。特徴としては、独特のルビを駆使する文章。「なんじゃこりゃあ!」と微妙に読みにくい印象があるのですが、しかし何故か妙に懐かしい。などと思っていたら、作者さんのデビュー作が『ルナ・ヴァルガー』て…。なーつかしー!
説明がかった台詞まわしと、ご都合主義と笑わば笑え的王道展開が、今風なテイストで描かれる「たぬき娘」という記号とドッキングして読めるのが、何とも不思議な感覚で。面白い・面白くないという以前に、オールドファンには一読の価値あり的な作品かも知れない…かも。
一方の「とらドラ」、こっちはわかりやすくもCKBのあの歌とか焦れったいガーなドラマとか、そんなアレ的コンセプトをりすぺくてぃんぐな設定は突っ込まないでおくとして、スクールランブルをぐるぐる思わせるすれ違い系多角関係ドラマの妙技にスマックダウン!な面白さはまさしく本年度モカデミー賞最優秀作品候補なみに必読かと思われる次第。つまりは電車で読むと危険です、と。
何といっても素晴らしいのは、ページを捲ってすぐの「あなたにとって、手乗りタイガーってなんですか?」で始まる一連のイラスト展開。各キャラのとぼけた受け答えが良い感じのモノローグとなってタイトルコール的イラストの「とらドラ!」に続き、オチは大河自身のぼそっとした一言で締める…アニメあるいはゲームのオープニングにも似た構成はお見事。
お話そのものは、荒々しくも破壊力満点な『田村くん』と比べれば大人しめでしょうか。殺るときは殺る的傍若無人さ加減な性格とドジっ娘ミニという組み合わせは今の時点では隙がない…それ故のまとまり具合といったところでしょうか。とは言え、科学反応の萌芽ともいうべき名称チェンジでエヘヘ☆エピソードが引きだったので次回以降の展開は楽しみで仕方ない!
それよりも、所々に散りばめられた小さなエピソードが凄く良いな、と思う訳でして。ラブレターで襖とか、シンデレラナイトでばいばい高須くんとか、世界でまだ誰もみた事がない笑顔の行方とか。軽妙なやりとりに加えて、しっとりと幻想的な仕上がりになっているのはこの辺のエピソードが効いているんじゃないかと。


そんなこんなで。たぬきときつねで古き良き時代を感じてみるか、たいがーアンドどらごんでラブコメの最先端を追ってみるか…2つの新シリーズがまた交わる時があっても良いな、と思いつつ。