偶然だね。私も七って言うんだ。

少女七竈と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人

―男たちなど滅びてしまえ。吹け、滅びの風。このような、グサリと胸にささる言葉を吐露するのは、少々時代がかった言葉遣いに鉄道マニアの女子高校生(絶世の美女)。もうこれだけで、どうにかなるくらいにワクワクするのは間違いない小説ではあります。表紙を一目見て買いに走ろうと思ったら、作者が桜庭一樹だったという順序だったのですが。黒か白か?と問われれば、いや、紅だろう、と。紅桜庭。
冒頭、「辻斬り」を唐突に敢行する母親のエピソードは、現実をほんの少し逸脱すれば、分かる気がしないでもないかな?その結果、いんらんの子は美しいのだと親友に言われてうっとりとする非常に幻想的な娘の登場…それは現代になお残る地方の因習もあってか、おとぎ話めいたつくりとなっているのが面白い。恐らくは平成生まれ、であろうに。
その次が、犬。犬視点からのエピソードです。七竈がむくむくと言う呼称になってて何ともコミカル。緒方みすず後輩との掛け合いも良い。七竈と雪風、2人だからこそ揃う風景を観ていたいという心情は、なるほど納得。青春の中の永遠にふさわしい美しさを彼氏彼女は持っていました。
そして、最後はやっぱり恋物語…だったのでしょうか。許さない事だけが純情です、という響きはもはや告白のようにしか聞こえなかったし。雪風は機関銃で手当たり次第撃ちまくりながら、きっぱりと別れを告げて。互いの成長が永遠性を失わせるというシンプルな構図と、生まれながらの因縁。しかし、そんな枠組みでは収まらないほどの魅力が七竈という少女にはありました。同時に、彼女をとりまく大人たちの「カワイソウ」を、胸におさめつつ。