レジェンド・オブ・レッドデッドリーフ

赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説

この作品ほど、桜庭一樹を女流作家と意識させる本はなかったな、というのが第一印象。それでいて、旧家の因習を不思議と軽やかに書き切っているのは、やはり新しい世代の筆を感じさせるなぁと妙に感心。
昭和から平成に至る道のりの節目節目に生きた三世代、タツを含めたら四世代のそれぞれの生き様は本当に美しい。自由も美しい、美しくなるのだと一歩を踏み出すことができるなら、伝説もきっと継承せれていくんだろうなーとぼんやりと思う訳で。
特に伝わってきたのは大人になるという事、大人になれないという事を登場人物それぞれが体験しているような描写。万葉の妻になった瞬間、毛毬の青春時代の終わり、自由が謎を解いたとき…そして女に対応する男たちもそれぞれの子供時代を終えたり終えないままであったり。伝統を今現在価値にきっちり繋げたという意味ではなかなか良い本に巡りあえたなーと思います。個人的にはもっと重苦しくても全然OKだったのですが、そうなると最後の台詞があまりにも浮きすぎたものになるのかも…などと思いつつ。