女の子と思い出と食べ物と。

お月さん

お月さん

女の子の食卓 2 (りぼんマスコットコミックス クッキー)

女の子の食卓 2 (りぼんマスコットコミックス クッキー)

何とはなしに購入した『お月さん』に、まずやられました。読み進めるうちに今度は、どうしても『女の子の食卓』が読みたくなって。そういえば2巻出てたような…と探してみたら地元の本屋であっさり発見。うーん、些細な事ほど嬉しい。

  • お月さん

ひとつひとつがジンワリと響く短編集。おぼろげながら懐かしい町並みの描写が素晴らしく良い。商店街に並ぶ、寂びれて切ない、だけれど何処か愛しいお店のイメージが頭に浮かんでは胸をついて。
登場人物も、普通よりはどう見ても変でどちらかというと嫌われたりするようなタイプばかり。そんな人たちを、自然体で受け止めては読んでるこちら側に届けてくれる語り手の主人公が素敵です。ほろ苦くて、切なくて、ままならない思い出すら優しく思えるのは何ともニクイなーと。
えも言われぬ、小さな満足感と思いがけず自らの子供時代がハッと甦る快感を味わいたいならば是非。すごーく感動する訳でもない事が逆に嬉しくなる一冊なのでした。

で、何故この漫画を読みたくなったかというと、小説内で必ずでてくる食事シーンがとても印象的だったから。女の子の記憶に残る一品は、かくも繊細なものかと思わず嘆息しちゃいます。
それにしても、「珠玉のフーズメモリー」という肩書きは伊達じゃないです。一つ一つのエピソードごと、後ろ向きな言動を優しくほぐしていく思い出のメニューもあれば、口にするたび引っかかるトラウマのようなメニューもあって…どうにも切ない。特に恋にまつわるお話は良いです。個人的には「妹の極上のスクランブルエッグ」と「彼女のお店の鴨南ばんそば」と「別れた彼のホット・バタード・ラム」が好き。何でも口にできる彼女が、どうしても食べられないもの…なーんてグッとくるんですけど!変な趣味ではない。


女の子、という表現は決して文学的な響きじゃなくて、今を生きる女性という意味で。それでもそこには、思い出に残る食べ物はきっとある筈という等身大の共感を2つの作品から感じつつ。