チョイと昔の陰陽師事情

陰陽ノ京 (電撃文庫)

陰陽ノ京 (電撃文庫)

次は新シリーズかな?と思っていたら何と『陰陽ノ京』が何年か振りに登場という事で、慌てて既刊を読み直し中ー。改めて読んでみると、やっぱ面白い。時継のポジションがもろウルクで、成る程これが風に聞こえし幼馴染重視の設定というか属性か…と思わず感心。
陰陽師といえば安倍晴明、しかも大概は美形なご面相なのですが、この作品ではただのおっさんなのが印象的。年齢的な事を考えると妥当で、神秘的なイメージを意図的に払拭しているのが作者のこだわりでしょうかね。保胤の穏やかな性格と晴明の破天荒な性格の組み合わせがナイスです。
史実としての陰陽師の説明は今読むと親切すぎるなーというのは全く個人の問題ですが、微笑ましい。が、保胤の目指す職業的な理想と「陰陽師」という現実の間で揺れる葛藤は、優しい主人公が背負う常たる宿命―例えばヤン・ウェンリーのような―であり、今後の苛烈な運命を予感させずにはいられません。とにかく、新刊までに既刊復習復習!という事で一つ。
陰陽師 (1) (Jets comics)

陰陽師 (1) (Jets comics)

安倍晴明、鬼の上前はねる奴。岡野版陰陽師は、より妖しくより美しく、謎めいた晴明であるのが特徴。それでいて平安時代の専門用語にラブコール、メンテナンス、トリートメントなどのルビを振った独特の会話が面白いです。巻が進む毎に魔術師としての側面を色濃くしていき、最後は何処まで行くのだ?とハラハラ。そういえば、奈須きのこテキストよろしく魔道の深奥に至る場面などもありましたし。巻末の資料の充実っぷりはファイブスターにも匹敵するかも?とにかく、陰陽師始めたい人はマストな漫画でしょう、間違いなく。あなたは東京がきらいですか?シャネルの服についた生霊を鮮やかに祓う第1話が印象的な、CLAMP初期の名作。ひっさびさに読んで、ああ今も昔もCLAMPはCLAMPなのねーと思ってみたり。陰陽師・昴流としての葛藤は、『陰陽ノ京』の主人公にも相通じるものがあったりします。自分自身のやりたい仕事や夢、祓うことが本当に良いことなのか?という悩みなどなど。それでいて、物語終盤での運命の流れがガラっと変わるところが凄い。良いのか悪いのかという次元ではなく、『東京BABYLON』の結末が好きです。


何処で誰が言ったか、「本当に怖いのは人間」というフレーズ。ホラーものの定番句であると同時に陰陽師的にも当てはまる言葉でしょう。その人間を、飄々と祓うか葛藤の末祓うか―陰陽師の生き様をどう描くかが各クリエーターの魅せどころかなと胸に留めつつ、『陰陽ノ京』最新刊に期待期待ー。