散りとて積もる、淡い桜の恋心

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

読み進めるうち頬が緩んで仕方ない、でも止められない…これだからミステリは面白い!と思わせてくれる作品。事件・動機・真相・背景、それぞれの側面から語られる世の理に対する、最後の回答が本当に素晴らしい。良質のミステリーであると同時に最高の純愛小説でもあるのは間違いなかった。ハードカバーの帯見た時には半信半疑だったのが嘆かわしい。そうすりゃ後4年早く歌野晶午に出会えていたのにー。
それにしても、街なみの風景や登場人物のツール等は、本当に細かい描写でリアリティあるなーと感心します。しかも現代性に沿った、違和感のない緻密さによって自然と読めるような文章でもあり。当然の如く褒めるべきポイントであり、同時に曲者なポイントであるのが堪りません。ホイホイと熱中して読んでいたらドーンと来るタイプという感じ?でもそこが好き。作品ごとに、上げて落とすか、落として上げるか、そこが大問題なのですけども。総じて問題作なのが多いのも納得です。
内容が内容だけに、お話自体の感想をまま言うのも引けるのですが、ポイントは二回目読むときの冒頭部分。これだけは間違いなくオススメで、妙な荒々しさと「何でもやってやろう屋」という設定がリピート時に妙な快感を覚えます。生々しさのリアリティがグッと増しますよ?と手招きしつつ。