傷だらけの心に、キスの雨が降る

とてつもない虚無に圧倒されました。しかも冒頭で、いきなり。オイレンとスプライトが統合されて始まった最終局面は、当然の如く今までよりも苛烈なストーリー展開で、読んでるこちら側がもう諦めるくらいです、事件に関わる重要な登場人物の生存を。誰が味方で誰が敵なのか。何が善で何が悪なのか。そうやって色をつけて区別して安心できる世界じゃないから、生きているだけで(読んでいるだけで)苦しい。そんな絶望的な道を、前に進み続ける涼月・陽炎・夕霧の姿にまたしても感動を覚えました。読むたび読むたび同じ思いなのですが、何て良い女なのでしょう。真の絶望が訪れてもなお彼女達は歩みを止めず、世界が終わろうとする時でさえ3人は明確な意思で前に進む―想い人のために。
当然、次の巻で焦点が当たるスプライトの面々も時々で交差してきますが、色々進化し過ぎているのが堪らんです。今までは同時進行だったのでリアルタイムで背景がわかりましたが、今回はもどかしい!早く続きを!しかし今回のラストの続きは「次の次」なんですよね、順番的に考えると。ヴェロシティみたいに週間でドドンと来てくれないと困るくらいに楽しみな引きだったので、もう忘れようと思います、いっその事。何、ロードス島戦記の時も結構待てたんだからきっと大丈夫。早く読みたい。
その他、個人的なツボは多々あったのですが、印象的なのはマスターサ−バーの邂逅。何、このロマンチックが止まらない発言。電子だって、恋をする。どこぞの博士が言いそうな場面でした。そんな状況を作った夕霧も凄い、というか一番核心に近かったですね。事件の大元へは陽炎が迫り、最後は涼月が「次」へと進む…これだけの希望があっても、まだ届かない黒幕は一体何者なんでしょう。最終へと到るカタルシスをまだかまだかと待ち構えつつ。