とても残念な貴方へ。

読み終わるラストページ、頭の中でおもむろにBGMが流れてきました。『こどちゃ』と『ハチクロ』のエンディングが!良い引きしてます本当に。
仮にメデイアワークス文庫で出ていたとしたら、完璧にエンタメ小説の棚に納まっても可笑しくはない青春小説でした。個人的には吉田修一横道世之介に作風が似ているなーという印象。俯瞰的な視線から物語が進んでいく構造と、登場キャラクターのズレた感性が面白いという点で。サンバをおまけんに変えると本当そっくり。イラスト:駒築えーじは、『イリヤ』を連想するのでこれはこれで明確な意図アリな組み合わせ。短いシリーズで駆け抜けるのか長くモヤっと続くのか。どうなんでしょう。
登場人物は、NANAネタ丸出しのお姉さんとか旬の短かった森ガール(…とは思えない描写だったんですがどうなんだろう)とか、狙って外してみたパーツが多いかも?ひとえにこれは、ヒロインの香子の「おかしさ」をどう作品全体で表現するか、という試みと考えるのは深読みでしょうか。万里の方は、王道とも言える「高校時代の彼女と今気になっている女の子の邂逅」が意外な形で浮かび上がってくるのが凄かった。あの瞬間、冒頭の不可解な場面だとか、ところどころの視点が繋がっただけでなく、綺麗に始まる・あるいは終わるはずだった恋がもう一絡まりして…何とも切ないです。
とにかく続いてしまったからにはどんな展開もあり得る恋模様だと思うので、じりじりと待ち焦がれるのも良し、あれやこれや妄想してみるのも良しの美味しい状況を次巻まで楽しみます。あとは、読んだ人それぞれの読書体験によって捉え方色々違うのかも…と思ったり思わなかったり。こんな感じの青春小説読んだこと「あるある」派だと割りと暗めの未来予想図になりがち?それとも電撃文庫のシリーズだから大丈夫?とにもかくにも「今」この1巻の、甘酸っぱさをしばらく堪能しつつ。